矯正治療Q&A
仙台矯正歯科クリニックに寄せられた、矯正治療に関するご質問にお答えしています。
矯正治療についてもっと知りたいという方は、ぜひご覧ください。
矯正治療を始める前に知りたい
歯並びが悪いと何がいけないのでしょうか?
歯並びが悪いからといって、命が脅かされるわけではありません。しかし、以下のような不都合が生じます。
・歯を磨きにくくなり、磨き残しができて、その部分の虫歯のリスクが高くなる
・噛む力をすべての歯で均等に受け止められず、特定の歯にだけ負担がかかり、その歯の寿命が短くなることがある
・一部の歯が干渉し、歯のすり減りや顎関節への負担につながり、顎関節症や顎の変形を引き起こすことがある
・咀嚼能力が落ち、胃腸への負担が大きくなる
・発音に影響が出ることがある
・口元がコンプレックスになり、人前に出ることが億劫になるなど、性格に影響がでることがある
以上のことから、歯並びが悪いことは病気ではありませんが、不健康な状態だといえます。矯正治療で歯並びを整えるということは、単に見た目を良くするだけではありません。お口、そして精神的な部分を含めた全身の健康状態が良好になることで、QOL(Quality of Life=生活の質)の向上につながるのです。
こどもは何歳くらいから矯正を始めるのがよいのでしょうか?
基本的に成長期に行う土台作りの治療(1期治療)と、体の成長がほぼ終了してから行う仕上げの治療(2期治療)の2段階に分けられます。それぞれの開始時期は、体の成長進度(骨年齢)と、歯の生え変わり進度(歯牙年齢)、そのほか多くの要因を考慮して判断されます。
1期治療の開始の目安は、すべての6歳臼歯と上下の前歯の永久歯が生えそろったときです。2期治療の開始の目安は、中学生後半から高校生くらいです。
ただし、注意を要する噛み合わせの場合もあるので、気になった時点で一度矯正専門の歯科医院で相談されることをお勧めします。
こどもの矯正治療はできるだけ早く始めた方がよいのでしょうか?
矯正治療は「いつまでにやらなければ手遅れになる」ということはありません。開始時期や治療法についてさまざまな考え方があり、矯正歯科医よってそれらは異なります。
こどもの矯正治療の開始時期や治療法は、体や顎の骨の状態、また今後の成長予測、乳歯や永久歯の状態などの生物学的背景から、性格、習癖、生活スタイルといった社会的背景まで、多くの要因を考慮して決めるものであるため、一様には決められません。やみくもに早く始めると、治療期間が長引いたり虫歯のリスクが高くなってしまったりして、お子さま自身の負担や経済的負担が増えてしまいます。
当院では前述の要因を考慮してお子さまやご家族の方とよく話し合い、充分に納得していただいたうえで、できるだけ適切なタイミングで大きな効果を得られる治療を、短期間で行うよう心がけています。
矯正治療をしても、歯が元に戻ってしまうと聞いたことがあります。
矯正治療により動かした歯は、元の位置に戻ろうとする傾向があります。そのため、矯正装置で歯を動かした後、そのままにしていると歯列が乱れてしまうことがあります。そこで、矯正装置を外した後は、骨や靱帯などの歯周組織が落ち着き噛み合わせが安定するまで、整えた歯をその位置で固定するための保定装置に切り換えて、保定期間に入ることになります。通常噛み合わせが安定するまで1~2年ほどかかりますが、保定期間中は毎月通院する必要はなく、問題がなければ年に2~3回の通院になります。保定装置にはプレートタイプ、透明なマウスピースタイプ、歯の裏側に貼り付けるワイヤータイプのものなどがあります。
治療が終わってきれいな歯並びになると、誰でも「治療が終わった!」という感覚になるものですが、せっかくきれいに整えた歯列を維持するためにも、油断せずきちんと保定装置を使う必要があります。
矯正歯科医院は、治療前の状態を細部まで把握し、それぞれの歯の後戻りをある程度計算に入れて歯を動かしていきます。現時点で精密に歯の動きをコントロールできるのはブラケットとワイヤーを使用する矯正装置のみであり、取り外せるマウスピース型装置や床矯正装置(プレートタイプの装置)では本格的な矯正治療は困難です。歯並びは、単純に並べただけでは元に戻りやすいのです。
矯正治療をすれば顎関節症は治りますか?
顎関節症はさまざまな要因が複雑に絡み合って起こる多因子疾患です。顎関節症の主な原因が、噛み合わせの悪さにあるとされていたときもありましたが、現在では、多数ある顎関節症の原因のひとつが、噛み合わせの悪さであるという考え方に変わってきました。
顎関節症の治療はそれなりに難しく、根本的な解決は困難です。矯正治療をすれば必ず顎関節症が治るというわけではありませんが、矯正治療で噛み合わせを整え、左右均等に噛めるようにすることは、原因のひとつを改善するということにつながると考えています。実際、矯正治療で顎関節症が改善したという方は多数おられます。
認定医とはなんですか?
現行の制度では、歯科医師であれば「一般歯科」「小児歯科」「矯正歯科」「口腔外科」の4つの診療科目を掲げられます。つまり、矯正歯科や口腔外科などを専修していなくても、また充分な臨床経験を積んでいなくても、その分野の治療をしてもよいということです。
しかし、現実には各分野の専門化が進んでいるため、大学で6年間の学部教育を受けて歯科医師免許を取得しただけでは、本格的な治療をするには不充分なのです。また、これらの分野すべてに精通している歯科医師はほんのわずかしかいません。
矯正歯科の分野はたいへん高度な専門知識・技術を要する分野です。そこで設けられたのが、日本矯正歯科学会による「認定医」制度です。これは、矯正歯科医療の水準の維持・向上を図り、適切な歯科医療を提供することを目的としたものです。認定医の資格は、5年以上学会に所属し、大学病院など学会が認めた矯正歯科専門医療機関において5年以上にわたり相当の臨床経験を有し、学術誌に矯正歯科臨床に関する報告を発表し、審査に合格した歯科医師に与えられるものです。更新は5年ごとに行われ、学術大会への出席や発表、および学術誌における報告を行う義務があります。
治療の途中で引っ越す可能性があります。
矯正治療は、基本的に一度開始したら最後まで同じ医院で行うのが理想です。なぜなら、治療法には多数の流派があり、矯正歯科医によって考え方や治療法が異なるからです。引っ越し先で同じ治療方針で引き継いでもらえる歯科医院があれば問題ありませんが、そうでない場合は治療方針が変わってしまう可能性があります。
もうひとつは、転院すると初期費用などが発生して余計に費用がかかってしまうことがあるからです。当院では、治療中にやむを得ず引っ越される患者さまには、できる限り責任をもって転院先をご紹介しますが、引っ越しの可能性が高い場合は、充分に相談してから治療開始の可否を決めるようにしています。
治療方法について知りたい
できる限り歯を抜かないで治療したいです。
従来の矯正治療では、歯列の途中の歯を抜いて治療することが多かったのですが、歯科矯正用アンカースクリューを利用した矯正治療を併用することで、歯を抜かずに治療できることが多くなりました(ただし、親知らずがある場合は抜きます)。こどもの矯正治療では、乳歯を抜くことはあっても、基本的に永久歯を抜くことはありません。
抜歯をするかしないかの判断は、顎の骨の大きさと歯のバランス、口腔周囲の軟組織(口唇、舌、頬)との兼ね合い、口元の審美的機能的観点など、さまざまな要因を考慮しなければならないので、矯正歯科医でなければ判断できません。
当院では、できるだけ健康な歯を抜かない方針ですが、抜いた方がよい場合には、ご相談させていただきます。
装置が目立つのが気になります。
矯正装置にはさまざまな種類があります。通常の矯正治療で使うブラケット(歯1本1本につける小さな装置)にも、透明なプラスチック製、乳白色のセラミック製など、目立たないよう工夫されているものがあります。
さらに装置を目立たなくする方法として、ブラケットを歯の裏側につける裏側矯正(リンガル)という方法があり、これであれば装置が外から見えることはほとんどありません。芸能人やスポーツ選手などによく利用される治療法で、装置をできる限り見せたくない方や、職業上装置が見えると困る方などにたいへんお勧めです。
また、目立つ上の歯は裏側に、目立たない下の歯は表側に装置をつけるハーフリンガルという方法もあり、こちらは比較的費用を抑えることができます。
歯科矯正用アンカースクリューを利用した矯正治療は痛くないですか?
ミニスクリュータイプの場合は、麻酔をしてから歯肉にスクリューを埋入します。所要時間は1本5分程度です。術後に麻酔が切れると、うずくような感覚がでる場合がありますが、痛み止めの服用により、1~2日で痛みは治まります。
ミニプレートタイプの場合は、麻酔をした後、歯肉の粘膜を切開し、プレートをスクリューで固定して粘膜を縫合します。所要時間は1枚15分程度です。こちらも痛み止めの服用により、2~3日で痛みが治まります。ただし、スクリュータイプより外科的な侵襲があり、術後に顔が腫れることがありますが、これも数日で治まります。
矯正治療中、これらのインプラントの周辺が腫れ、うずくような感覚がでることがあります。腫れや痛みがひどいときは、消毒したり抗炎症剤を服用していただいたりすることがあります。
結婚式までに歯並びを治すことはできますか?
結婚式までに半年以上の期間があれば、前歯だけ整えることはできます。
ただ、前歯の治療の後に奥歯を治すなど、通常の矯正治療とは異なる手順で治療を行うため、トータルで見たときの治療期間は長くなることがあります。
マウスピース矯正では治せない症状があるのですか?
すべての矯正歯科医が同じ意見かどうかはわかりませんが、マウスピース矯正には治療しやすい歯並びと、治療が難しい歯並びがあります。
マウスピース矯正は、常に研究開発が続けられているため、数年後には「どのような歯並びも治せる」といえる状況になるかもしれませんが、現段階では、マウスピース矯正で治すのは不可能ではないにしても、以下のように、圧倒的に通常のブラケット・ワイヤー矯正のほうが、良好な治療結果、治療期間の縮短につながる歯並びもあると思っています。
・上下顎の位置関係が大きくずれているなど、骨格系の問題で起きている症状
・一般的に歯の移動量が大きくなる傾向がある、抜歯をともなう症状
・マウスピース矯正では萌出させられない埋伏歯などがある
大切なのは、治療を受けた患者さまにご満足いただける結果へと導くことです。近年、マウスピース矯正の適応範囲は大幅に広がっていますが、明らかに適応範囲外の症例を無理にマウスピース矯正で治療しても良い結果へと導けません。
「どうしてもマウスピース矯正で治療したい」という方には、ほかの目立たない装置をおすすめすることもあります。
治療中の生活・通院について知りたい
矯正治療は痛くないですか?
矯正治療で歯を動かすと、最初は誰でも筋肉痛のような痛みを感じます。最初のうちは硬いものを噛むと痛みますが、通常2~3日もすれば治まり、その後は慣れて何も感じなくなります。ブラケットやワイヤーなどの装置が当たって、唇や頬の内側が痛くなることもありますが、こちらも1週間もすれば慣れて痛みはなくなります。裏側矯正は、最初のうち舌が痛みます。
お口の中に装置が入ると、はじめは痛みや違和感などがありますが、その段階を超えると慣れていただけます。院長の三谷も矯正治療を経験しているため、これらの痛みや違和感などはよく理解しているつもりです。
治療期間はどのくらいですか?
歯に矯正装置をつけて積極的に歯を動かす期間は、通常、こどもの場合で1年から1年半、大人の場合で2年前後(症状にもよりますが、半年から3年くらいの間)です。この期間は約1ヵ月に1回の通院になりますが、この感覚を維持できないと治療期間が長引いてしまうことがあります。
その後は矯正装置を外して、動かした歯が元に戻らないように押さえておく保定期間に入ります。これは通常2年から3年で、1年に2、3回の通院になります。当院では、保定期間はアフターケアの期間として、通院が可能であれば3年ほど設定しています。
矯正治療をすると虫歯ができやすくなりませんか?
矯正治療中は歯に複雑な構造の装置がつくため、汚れが付きやすくなり、虫歯のリスクが高くなります。当院では、患者さまが来院されたびに歯のクリーニングを徹底して行っています。また、随時歯磨きの練習やフッ素塗布などを行い、虫歯予防に努めております。 もちろん、患者さまご自身にも毎日の歯磨きをしっかり行っていただく必要があります。
食事や会話に支障はありますか?
装置をつけた直後は歯の痛みや違和感があるため、硬いものを噛むと痛むことがありますが、数日で問題なく食べられるようになります。食事制限も基本的にありません。
また、裏側矯正のように歯の裏側に装置がつく場合は、多少発音に障害がでることがありますが、ほとんどの場合、慣れて問題なく発音できるようになります。いつまでも慣れないという方には、装置の切り換えなどの対応をしていますので、安心して治療を受けていただけます。
スポーツに支障はありますか?
ほとんどの場合は問題ありませんが、サッカーボールなどが顔に当たった場合は、唇が切れてしまう可能性があります。一部の激しい運動や格闘技をされる方には、スポーツガード、マウスガードなどをお作りします。
楽器の演奏に支障はありますか?
ほとんどの場合は問題ありません。吹奏楽の管楽器のなかでも、唇に押し当てるタイプなど一部のものは最初のうちは違和感があるようですが、ほとんどの場合は慣れてしまうようです。
治療費・支払い方法について知りたい
矯正治療は健康保険が適用されないのですか?
通常の矯正治療は、基本的に健康保険は適用されません。しかし、以下の場合には適用されます。ひとつは、顎骨の形態的な変形や、上下顎の骨の不調和が大きく、手術を併用しなければならない外科的矯正治療の場合です。もうひとつは、口唇口蓋裂など厚生労働省が定める先天性疾患の矯正治療の場合です。
当院は仙台市の認定を受けた「指定自立支援医療機関(育成医療・更生医療)」「顎口腔機能診断施設」に認定されているため、これらの場合の矯正治療でも安心して治療を受けていただけます。
治療費用がどのくらいかかるのか心配です。
当院では、初診相談のときに、予想されるおおまかな費用をお知らせしています。次に初回の基本検査を行い、治療方針が決定した際に、治療にかかる費用の総額をご提示しています。よほどの例外がない限り、後から追加の費用をご請求することはありません。
また、分割でのお支払いも承っていますので、お気軽にご相談ください。
治療費用の支払いはどのようにすればいいですか?
初診相談料や検査・診断料は医院でお支払いただきます。治療開始となった場合は、装置代などを含めた初期費用(基本施術料)の一部は事前に、残りは動的治療期間中にお支払いいただきます。動的治療期間中の調整料はご来院のつどお支払いいただきます(およそ月に1回)。 お支払い方法は、現金のほか各種クレジットカード、デビッドカード、銀行振り込み、ゆうちょ銀行振り込みなど、患者さまのご要望にできるだけ対応できるようにいたしております。また初期費用については、院内での分割払い(無利息手数料なし・4回まで)や、メディカルローン(利息あり・60回まで)も承っています。
矯正治療のリスク・副作用について知りたい
矯正治療に副作用はありますか?
矯正装置で歯を動かすと、通常は尖っている歯根(歯の根っこ)の先が丸まってしまうことがあります。これを「歯根吸収」といいます。これには、歯にかける力の強さ、移動方向、力をかける期間、そして体質などが複雑に関わっており、誰にでも起こる可能性がありますが、通常はほとんど問題ありません。しかし、ごくまれにこの歯根吸収が大幅に進んでしまうことがあります。そのときは治療計画を変更をし、その歯にできる限り負担をかけないようにしますが、場合によっては治療を中止しなければならないこともあります。
また、きわめてまれですが、歯の移動中に歯の神経が死んでしまうことがあります。それでも歯を移動させられますが、場合によっては歯が変色する可能性があります。当院では、治療中も定期的にレントゲンなどを撮って歯や顎の骨に異常がないかどうかを随時チェックしています。
金属アレルギーがある場合は、専門の機関で検査を受けていただき、反応する金属物質ができる限り含まれない矯正装置を使って治療を行っています。
また、他に以下のようなリスク・副作用がある事を予めお見知りおきください。
・歯肉退縮
・治療期間の延長
・虫歯になり易くなることがある。
また、ごくまれに歯が骨と癒着し、歯が動かなくなることがあります。(専門用語でこのことをアンキローシスといいます。)